トリトン:逆向きに巡る衛星
海王星最大の衛星トリトンは、大型衛星では唯一、惑星の自転と逆向きに公転し、捕獲されたカイパーベルト天体と考えられています。表面温度は約−235℃ですが、窒素の間欠泉と淡い桃色の窒素氷冠があります。数十億年後には潮汐力で崩れ、海王星の環になる可能性があります。

基本情報
- 直径
- 2,707km
- 海王星からの距離
- 約35万5,000km
- 公転周期
- 5.88日(逆行)
Tritonは、海王星の自転とは反対向きに公転しています。直径は約2,707 kmで冥王星より大きく、海王星最大の衛星です。この異例の軌道は、Tritonが海王星の周囲で生まれたのではなく、カイパーベルトから捕らえられた天体であることを強く示しています。
逆向きの軌道
大型衛星のうち、逆行軌道をもつのはTritonだけです。海王星から約35万5,000 km、地球と月の距離よりも近いところを、約5.88日でほぼ円形に一周します。

カイパーベルトから捕らえられた天体
海王星の周囲にあった円盤から生まれた衛星なら、通常は惑星の自転と同じ向きに回ります。Tritonの逆向きの運動と、冥王星に似た窒素・メタンの氷は、もともと独立したカイパーベルト天体だったという説を支えます。捕獲時には、それ以前にあった衛星系が乱され、当初は細長かったTritonの軌道も、潮汐作用によって次第に円形へ変わったと考えられています。
岩石、氷、そして地下海の可能性
平均密度は約2.06 g/cm³で、内部に相当量の岩石が含まれることを示します。モデルでは、質量のおよそ3分の2を占める岩石・金属質の核を水氷の層が包み、表面を窒素、メタン、一酸化炭素の霜が覆うと考えられています。捕獲後の強い潮汐加熱によって生じた地下海が、今も完全には凍っていない可能性があります。

極寒の地表から噴き出す窒素
地表温度は−235°Cに達します。それでもVoyager 2は、暗い塵を約8 km上空まで運び、風下へ長い筋を残す窒素の噴出を観測しました。有力な説明は、太陽光が半透明の窒素氷を通り抜けて下の暗い層を暖め、たまったガスの圧力が氷を破って噴き出すというものです。

噴出の音は聞こえるのか
窒素の大気は非常に薄く、地球の空気ほど効率よく音を運べません。ここで噴き出すのは熱い溶岩ではなく、冷たいガスと塵です。着陸機からは、黒い空の下に桃色がかった氷が見え、潮汐固定のため海王星は空のほぼ同じ場所にとどまります。極端な低温と長い通信時間が探査を難しくします。
桃色の氷とメロン皮状地形
放射線がメタンへ作用すると、ソリンと総称される複雑な有機物が生まれ、南部の窒素・メタン氷を桃色に染めます。別の緯度には、くぼみが連なるメロンの皮のような地形があります。衝突クレーターが少ないことと合わせ、地表が更新されてきた地質学的に若い世界だと分かります。
いつか環になるのか
逆行するTritonには潮汐力が軌道を徐々に下げる向きに働きます。推定では、およそ14億〜36億年後にRoche限界を越えて砕け、その一部が海王星の環になる可能性があります。ただし時期も結末も内部構造に左右されるため、遠い未来の確定した予言ではありません。


